スパイラル

1









「自分のからだ」に戻れた日のことを、多分、絶対に、わすれない。

 からだが床に打ちつけられる物凄い衝撃におそわれて、アルフォンスが一番最初に感じたのは痛みだった。
あまりに唐突であまりに久しぶりな自分の体のその感覚に、アルフォンスは最初、もう自分は死んでしまったのだと
思うところだった。

そして、聞こえてきた声。
「アル!アル、アルフォンス!!」
鼓膜がびりびりと痺れる感覚。それすらやっぱり、痛い。

それでも懸命に瞳を開いた。兄の顔を見たい、もっと、声を聞きたい。
「アルフォンス、おい!目ぇ開けろ。返事しろ!!なんでもいいから…」


兄さん、ボクは
ボクは、ここにいるよ。
だいじょうぶだよ。

ゆるやかに瞳を開こうとした。焦点が定まらない上にあまりにまぶしくて、すぐに目を閉じてしまう。目頭が痙攣して反
射のためか涙が流れたことを知った。
頬を伝う、なみだ。ああ、泣くことをボクは何度焦がれただろうか。
 目が上手く使えないことで、兄の顔をまじまじとは見ることはできなかったけれど、兄がそこにいることは痛いほど
感じた。
頬がひどく熱い、きっと兄が泣いているからだ。

「にいさん」
言葉を発そうとした。一番最初に、兄を呼びたい。自分の口でしゃべるって、どんな感じだっけ?
口から出たのは、音ではなく弱い呼気だけだった。それでも兄は弟の必死の呼びかけをしっかりと受け止めてくれた
らしい。
「アルフォンスっ!」
痛いほどに抱きすくめられた。兄の嗚咽と、熱が伝わってくる。

かえって、きた。

こころが、芯から震えるのがわかった。






















2へ
トップへ
トップへ
戻る
戻る



スパイラル2
スパイラル2