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「ほんと・・・分かりやすいわね、あんた。」
「うっせえ。」
見事な長い金髪を掻きあげて、エドワードと思われる毛布の塊がいる、向かい側のソファに座った。
あー疲れた、と少女は大きな包みを、それでもいたわるようなひどく優しいしぐさで、そっと床に置く。
ったく。と、真っ青になってうつむく幼馴染に聞こえるように溜息。
外はもう暗くなっており、少し肌寒い。
いつもならばこの時間にはいちゃいちゃと(長い付き合いのウィンリィにはそうとしか形容できない仲のよさで)兄弟二
人が夕食を作っている頃だ。
弟が笑うと、兄も笑う。エドワードの視界にはアルフォンスしかいないなんて、ずっと前からわかりきったことだ。
本人だけが分かっていなかったなんて。
じろりと毛布の塊にに目線をやると、毛布にうずくまっているエドワードがはっきりと気まずそうに視線を外した。
アルは?と聞くと、今にもくずれ落ちんばかりに表情に影を掲げる。
どうやら今日は単なるけんかではないらしい。弟ばかの反応は本当にわかりやすい。
「アルに琴聞かせてあげるって約束してんのよ。明日また来るから。ちょっと置かせといてね、私は今日はもう、練習
しない!」
「腕が落ちるぞ」
「ばか。練習量の問題じゃないわよ。今日の集中力は使い果たしまし、たッ。」
大きく息を吸って伸びをする。ソファからの恨めしげな視線に気づくと、一気に肩を落として息を吐いた。
少しだけ苦笑した。
「本当に、アルが全部だもんね。」
エドワードがソファの上に起き上がり、膝を抱えたのを見届けてカーデガンを羽織った。
「大丈夫よ、アルだって、あんたの気持ちをきっとわかってくれる。」
「それは告白を受け入れてくれるって意味か」
ウィンリィは首をかしげた。肩に長い金髪がさらりと流れる。
「受け入れることはできないかもしれないけど。理解、はしてくれるんじゃない?って意味よ」
「それじゃあ、意味ないだろ・・・・」
はあ、と大きなため息を付いている。ついでに「アル、遅いなあ」というつぶやきが返ってきた。
「私、帰るわ。また明日来るから。アルにもよろしく言っておいて。」
「ああ・・・」
靴をはきながら、この玄関先でエドワードが華を抱えて立っていた情景が頭をかすめた。自分は華道をやる、と力強く
言ったのを思い出す。
強すぎるほどの眼差し、いつも一つのものしか見えていなくて、時々怖くなる。多分彼にとっての「世界」とは彼の大
切なひとを形成する一部でしかないのだろう。
玄関の扉が開いて、幼馴染が帰ったのを知った。いつもは兄弟二人で見送るが、今日は見送ることなど思いつきもし
なかった。
桜の落ちていく情景の、アルフォンスの表情を思い出す。いっそ表情を持たないような驚いた顔と何かを唐突に理解
したような困惑の表情。
かたん、と玄関の扉が開く音がした。
聞きなれた扉が開く音よりも、その気配で泣きたくなるほどその存在が帰ってきたことを知る。
ああ、と目を伏せた。おそらく今このリビングに続く廊下を歩いている弟を想う。
瞳に熱が集まる。
その存在ですべてを知っていくのだ、想いや、喜びや、悲しみや、怒りを。―――熱でさえ。
「――――アル?」
「・・・ただいま・・・」
部屋の戸口に、弟が立っている。電気をつけていないからひどくその存在を密やかに感じる。顔を伏せているせいで
表情が全く読めない。
アル。
心の中で一度呼んだ。
今まで何度も呼んできた名前を、切実に、熱を持って。
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