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頭に浮かぶのは「もの」とか「所有」とか、「全部」とか・・・、そういう言葉ばかりが果てを知ることなく渦巻いている。
暗闇の中でうなされるように熱い息を吐いた。
吐かれた息は短く、より性急にエドワードの情欲を急かす。
目を見開く、汗が顎を伝って零れおちた。
滴が落ちたのは普段は形の整った弟の眉毛で、それが今苦痛にゆがんでいて汗ばんでいる。
まばゆく輝く金色の髪の生え際、湿った所を口づけた。
甘く口づけたつもりだったのに、手加減がいつの間にか失われて獣のように噛みついた。
「ぃ・・・・っ」
「!わり・・・」
息をついて唇を離す。口の中に鉄分を感じ取って、慌ててアルフォンスの額に触れる。
「悪い、痛かったな・・・」
金髪の生え際に沿うように手を這わすと、ほんの少し紅いしずくがついていて驚いた。
アルフォンスは返事もせずに首を何度か振って荒い息を吐いている。
ごめんな、といいながら今度は唇に口づけた。言葉が想いが感情に追いつかなくてどうしたらいのかわからない。
自分が何をしているのかが、わからない。
「兄さん!」と、よく澄んだ声が弾んだ声音で自分を呼ぶことが怖くなったのはいつからだろう?
弟はよく笑う。体を取り戻したときは母親にそっくりだった顔も、成長するにつれ、似ているという印象を失っていった。
弟は弟のまま、アルフォンスの笑顔で笑う。目を細め口を大きく開けて歌うように、心から楽しそうに。
アルフォンスが笑うたびに、心のどこかが軋むような感覚を覚えたのはいつごろだろう?
体を繋げると、兄のすべてを受け入れて、アルフォンスはほほ笑まなくなる。からだの感覚に翻弄されてしまうようで
体の苦痛に顔を歪めて、ただただ息を荒げている。
「・・・・ぁ、・・・・・・・ッ」
つるりとした優しげな頬を暖かい滴が流れる。急くように唇でそのしずくを追って、自分の呼吸をその液体の上に落と
す。
痛みを与えて申し訳ないと確かに頭の隅で思うのだ、でも、それならばこんなにも痛い自分の心は、どうすればいい
というのだろう。
「好きだ」
やっと唇を放して、言葉を弟に告げた。今はそれで精一杯で、弟の存在を追うので精一杯で苦しくて苦しくて息も吐け
なくなりそうになる。
強く抱きしめると、弟はエドワードにまわした手に力を込めた。目の前にまで近づけた、水をいっぱいに孕んだ大きな
瞳を懸命に開いて、細める。透明なしずくが頬をするり、また流れていく。
「っ、にいさ――」
「オマエは、俺のだよな・・・・全部、全部俺のもんだよな」
気が昂ぶったせいで声が震えた。違う、これは興奮ではなく。
掌さえ震えるのは焦燥の所為。
こわばる背筋は恐怖の所為。
どこにも行かせないって、誰にも渡さないって、心に黒く重く沈み込む鉛に気づいてしまった所為。
弟は声にならない声で、兄の耳元に吹き込んだ、懸命に。
「うん、そうだよ」と呼吸だけで、兄の耳に届くように。
「ボクは、兄さんのものだ」
胸がどうしようもなく傷んで、ごめんな、そう言って強く抱きしめた。
アルフォンスはまた、切れた口の端を一生懸命上げて微笑もうとする。
「全部。・・・全部、兄さんのものだ」
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