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4月とはいえ、暗くした部屋は少し肌寒い気がする。
いつものような温かみも、温もりも、今日は少しだけ遠い気がする。
アルフォンスを見つめたまま、声を出せずにいた。
二人きりの部屋には、物音も一つもない。
ただ、小さく息を吐いたアルフォンスの呼吸の音だけが、ひとつ零れた。
アルフォンスは電気もつけずに部屋に入り、兄が座るソファからすこし距離を置いて床に座り込んだ。
くらい部屋に、短い金髪が映える。
その色よりも深い、優しい金色の瞳を見たいと思った。l
「アル、――」
「ウィンリイ、来たんだ・・・」
ソファに立てかけられていた琴の大きなケーに触れてアルフォンスが呟く。
言葉が発せられる度に空気が動くようで胸を締め付けられるような想いがした。
―――――――近づきたい
アルフォンスが黒いケースをそっと開く。
白い指先が優しく金具に触れて、撫ぜるように蓋を開いた。
どこからか入ってくるひそやかな光に、弦がきらきらと瞬いて、きっとアルフォンスの瞳も今、きらきらと光っているのだ
ろうと思った。
―――――――瞳が見たい。
「そういえば、今日約束してた」
「アル」
アルフォンスが息をつめて、次に兄が何を言おうとしているのか、聞こうとしていることを知る。
人差し指で弦を弾くと、コンという乾いた音がして、幼馴染が鳴らす時の、あの琴の表情はどうやったら出るのだろう
とぼんやりと考えた。
「・・・・いつから?」
「ん?」
親指で音を出す。今度はくぐもった音が出た。
「いつから、ただの兄弟として、見られなくなった・・・の・・・?」
ひと呼吸分だけ、静寂が訪れる。ソファの上の気配が身じろぎして、エドワードが床に直接座ったのがわかった。視
線を動かせずに、自分の琴を奏でる指を見つめる。
隣に胡坐をかくエドワードは頭をがりがりと気まずそうに掻いて、うーんとうなった。
「・・・アルが、目を覚ましてしばらくして・・・初めて気を失った時か、な」
「・・・庭で倒れたとき?」
アルフォンスの視界の中には、エドワードの、床につく掌が見える。ただ眼を伏せて、じっと琴の弦にかけた自分の指
を見つめた。
「アルが初めて倒れた時に、本当に心臓が止まるかと思った。お前を守りたいって思うんだ。何に変えても、ずっと一
緒にいたい。」
うつむいた背中が、心細く見えた。
きっと今、戸惑って困惑している。
「アル」
ひっそりと、息を吸った。きっとここで告げなければ伝わらない。ここで伝えなければ、掴めない。
「4年間、お前のことだけ考えてた。目が覚めたら、何話そう、どこに行こうって。」
ためらうように視線を上げてきた。長いまつげがひらりと返った。
大きな瞳の中に、迷いが見える。
弱さにも見えて、どうしようもなく抱きしめたくなった。
「今。付き合いたいやつとか、いるか?」
首を小さく横に振る。兄の視線が刺さるようで、耐えられずに伏せていた目を閉じた。
「じゃあ。少しだけでいいから」
弦に掛けた掌を取られた。拍子に弦がはじかれて短く、高い音が出る。
「少しだけでいいから・・・俺のこと、見てくれないか。」
取られた掌に口づけられる。音を立てて離れたエドワードの顔が今まで見たことのない表情で戸惑う、気配が近づい
て抱きしめられた。感じなれた気配と揺れる戸惑いに目を伏せる。
「兄としてだけじゃなくて家族としてだけじゃなくて、少しだけ俺自身を、俺として見てほしい」
耳元に息がかかる。腕に込められた力が強くなった
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