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もぞりと腕の中にいた存在が動いた。
ついつい、目が覚めてしまう。
「ん・・・」
目の前の瞼がぶるりと震える。
ああ、起きるなと思ったら、身じろぎして、やっぱりぼんやりした瞳で弟が見上げてきた。
にいさんと、一言発したが声がかすれて音になっていない。
うう・・・朝から可愛い。
「・・・ぉはよ。ごめん、起こした?」
「いや」
「寝てなよ、昨日、遅かったんでしょ?」
アルが起き上がろうとする。ほどかれそうになった腕にすこしだけ力を入れたら、子供をあやすように髪の毛をなでら
れた。
「三日間大変だったね、お疲れ様」
「・・・おう」
こどもじゃねえぞ、と抗議したかったが、あんまり心地よくてつい眼を閉じてしまう。
ああ、だけど三日間も軍に張り付けられてたんだ。もうちょっと弟の存在を堪能したい。
なんたって実は帰ってきたのは今さっきで、早朝だった。
錬成してから随分体力がついて安定したって言ったって油断はできないだろ、早く寝ろよ。とわざわざ毎日電話して
寝かせていたアルフォンスは、オレがやっと帰ってきたその日も、よいことなのだかちょっと残念なのだか、すやすや よく寝入っていた。
なんだか寂しくてシャワー浴びてすぐに抱きしめて眠ってしまったわけで。
とりあえずこいつがいれば俺の安眠は確保される。
できればこのまま一日、一緒に眠っていただきたいものなのだが。
「ごはん、作っとくね。兄さんはおやすみ」
だなんて優しい声が上から降ってくるもんだから、うとうとしてしまう。
腕から離れてベッドから降りて行ってしまう気配がするとやはりさびしい。
「うーさぶい・・・」
白い呼吸だけで呟いてベッドから降りる。シーツがすれる音を耳で追う。キャビネットに向かう弟の気配を追ってしまう
のは、もう習慣というか癖というか。
「ふ、ぁ」
小さく欠伸した小さな背中が、キャビネットの前から動かないから、起き上がってたまらず声をかけた。
「何してんだ?」
「・・・寝てていいのに。」
ベッドから降りて行ってアルの手元を覗き込む。丁度パジャマのボタンをはずしていたところだ。
「手がかじかんで、ボタンがはずせなくて」
錬成してからこっち、弟はあんまり細かいことが得意じゃない。そういう感覚はおいおい追い付いてくるんじゃないか、
とばっちゃんは言っていたっけ。
「そんな恰好で立ってると寒いだろ。」
かがみこんで、ボタンを外してやる。部屋の中が思ったよりも寒い、アルの吐いた息さえ、白く色をつけて向かいにか
がんだ俺の頬をかすめた。
すぐに用意してあったシャツをはおらせる。
「ありがとう」
うつむいた俺の額のあたりにかかってくる、感謝の言葉に顔がほころぶ。
自然上がった俺の口の端に、小さな唇が当たってきた。
アルから触れてくるなんて珍しい。まだ少し寝ボケているのかもしれない。
驚いて見上げた先の弟は、欠伸したからなのか、うるんだ瞳で見上げてくる。
ぐっときて、あわててボタンに集中した。
いくらなんでも朝からはな。がつがつしすぎて最愛の弟に怒られるのは、休日の朝にはさすがに痛い。
「早く着ないと、風邪ひいちまうな」
返事がない。不思議に思ったとき、小さな両腕が首にまわされて動転した。
触れた体はさっきまで温かかったのに、もう温度を失いかけている。慌てて包むように抱きしめてやる。
はぁ、と安心したように息を吐く小さな体が、なんだか心配になってくる。
お前、なんかあったのか?
「に、にいさん」
おそるおそる発された、弟の声は緊張している。
くっついた体から鼓動が伝わってきて、愛おしさと、それに比例するようにざわざわと不安が込み上げてきた。
体を抱きよせる。
「ん?」
首筋に当たる、さらりとした額と短い前髪、長いまつげ。
シャツを握ってくる小さな掌。
「朝は・・・だめ?」
んん??
「何が?」と聞いてしまいそうになって口をつぐんだ。
待て待て、これはもしかして。
朝だけども、今から朝ごはんをアルと一緒に作ろうって思ってて、眠いけど一日を最愛の弟と健やかに安らかに楽しく
過ごそうと思ってたとこだけれども。
これはお前、あれだよな、お、お誘い・・・ってやつだよな、間違いなく?
アルフォンスが。
そんな、お前。肩に顔うずめて真っ赤な顔して・・・
「だめ・・・ではないな、とりあえず・・・うん」
と、よくわからないことを呟いてみた。
そうだ、だめなはずはないのだ。
むしろ全然オッケーウェルカム。
兄ちゃんを誰だと思ってんだ、最年少記録を持つ、天才国家錬金術師だぞ!
そんでもって無能な上司にこき使われて、男盛りなのに三日間もお預けくらってたエドワード・エルリック(19)だ
ぞ・・・!!
ぐるぐる考えが巡るうちにどんどん切なくなってきて、抱き締めた腕に力を込めた。
アルフォンスはしがみつくようにその力に負けないほど強く、抱きしめ返してくれた。
あ、そっか。そうだよな
「俺の居ない三日間・・・さびしかった?」
って頭をなでながら聞いてみたら、
腕の中の温かい塊は、本当に小さくこっくりとうなずいて。
さびしかったよ・・・と俺にだけ聞こえる声で呟いた。
*****
19はまだまだ男盛りじゃねえええええ!!
とつっこんで終わる。
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