君を呼べる黄昏

(九)






扉が開く気配がして、エドワードは目を覚ました。正確には、意識だけが覚めた。
体が重くてしょうがない。目を開けることさえひどく億劫で、瞼を閉じたままにしておいた。

部屋の空気は温かい。今いったい何時ぐらいだろう。
瞼を透過してくる光に夜ではないとわかった。だけど肌寒い。きっと、昼間というわけでもないのだろう。照りつけるよ
うな光を持った太陽はもう隠れようとしている。

どこかで鳥の鳴く音がする。
自分は知ってしまっている。

きっと、もうすぐ闇がくるのだ。
あの強い光は、今日という日を失って。何度呼んでも戻ってこない。

深い深い闇と夜が、この扉を開けて、やってくる。

「来ないでくれ・・・」
ベッド脇に人の立つ気配。何も言わずにそんな所にたたずむ人なんて、世界中にたった一人しかいない。そばにいる
とわかっただけで、こんなにやさしい気持ちにさせるのも、たった一人しかいないのに。

だからこそ怖かった。
その瞳が、その口が、その存在が失われることが。何よりも怖かった。その言葉を紡ぐことが怖かった。
その人は、しばらく何も言わなかった。ただ一言、ぽつりと言葉をこぼす。

エドワードは、瞳を閉じたまま、ぞっとした。


「間に合うかな」
力なく、声が降りかかる。
ぱん、と乾いた音が響いて触りなれた掌が、エドワードの右腕に触れた。

「にいさん。あ、り・・・・」
待ってくれ、と叫びたかった。

だけどももう遅いことを何故か自分は知ってしまっていた。

虚無。
掌から、零れおちた時間たちと。
黄昏に満ちるその気配と。

ああ右腕が痛い。
光が、頬を伝い落ちる。
閉ざされた闇にひとりで横たわる。

黄昏が終わる。

光たちの戯れが終わり、闇が満ちてくる。
そうして眼を閉じてしまう。
動けなくなる

うごけなくなる








































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