いっちゃいちゃ
を目指しました





「アル」

エドワードはいそいそとした様子で、ベッドの端に腰掛けて弟を手招きする。
呼ばれた弟は照れくさそうに、だけどもたまらなく嬉しそうに笑ってベッドの上に乗り上げてきた。
エドワードの向かい側に胡座を掻く。弟は今、シャワーを浴びたばかりで生まれたてのような火照った顔でエドワード
に照れたように微笑みかけた。

お前、このパジャマぶかぶかだなあ。
苦笑する。
笑える自分が不思議だった。あるいは表情が曇っているのかもしれない。
気崩れたパジャマを、襟のところを持って整えてやる。
弟は、ん、と言って湿ったタオルののった頭をエドワードに差し出してきた。頭を乾かして欲しいらしい、それは二人が
小さいころの習慣だった。喧嘩をした日、風呂に入った後に必ずしていた、仲なおりの儀式のようなものだった。
エドワードが「仲なおり・・・」と呟くと、自然に笑いがこみ上げてきて、湿った髪の毛もそのままにしばらく笑った。
至極優しい気持ちでアルフォンスの頭に触れる。
タオル越しにわしゃわしゃと撫でると、アルフォンスはまた、「あはは」と声を上げて笑った。
栗色のきれいな髪の毛から、風呂あがりの清潔な匂いがする。笑って弾む嬉しそうな声さえなんだか清潔だ。

この部屋はこんなにあったかかっただろうか。
世界が急に色を持って輝きだす。
すべてのものが鮮やかに目に映る。どうしたって、笑顔がこぼれてしまう。

不意に、エドワードが頭を乾かす手を止めた。
タオルをすこしずらすと、アルフォンスの伏せられた大きな瞳がよく見える。金色の、長いまつげ。
その睫がひらり返されて、弟の二つの瞳がエドワードをじっと見上げてくる。
存在を確認されているようで、すこしくすぐったい。だから、エドワードは笑った。アルフォンスは、ちょっと泣きそうな顔
をした。笑っていた余韻からか、大きな瞳はうるんでいる。

「兄さん」

声。
何度も夢にまで見た。
似た声を聞くたびに振り返った。
自身のそばで15年も絶えず聞き続けた。
ある日途絶えてしまった、その声が。


しっかりと温度のある、頬に触れる。アルフォンスは見つめる目を閉じてくすぐったそうに笑った。
「・・・アルがちっせえなあ」
「・・・兄さんは大きいね」
ぼろりと、しずくが落ちて弟の湿った頬をさらに濡らす。添えていた手で、辿るようにぬぐった。
アルフォンスが、涙している。
瞼が閉じられて、桃色に色づいた頬をしずくが伝う。
涙が出たことに自分でもちょっと狼狽したらしい弟は、首をふるふる振りながらエドワードの胸にしがみつくように顔を
うずめた。

ははは、やっぱちっせえなあ・・・。と笑ったつもりだった声が震えて、思わずぎゅっとアルフォンスを抱きしめた。ゆり
かごになった気持ちで、体をゆるく揺らす。


2年間、失っていたんだなあ。
髪の毛の湿った匂いをひそかに吸い込みながら考えた。
二年間、自分は何をしてきたのだろう。よくもこの存在なくして生きてこれたもんだ。とちょっと感心してみたりする。

「泣くな。」
背中をぽんぽんと叩くと弟の大きな眼が見上げてきた。金色が濡れて溢れんばかりに淡く輝いて、エドワードはくらく
らした。
アルフォンスが、微笑む。また、しずくが頬を伝う。
ずっと、多分最初に失ったときから、この存在に焦がれ続けてきた。
体をささげてでも、命を賭けてでも、何度も何度も取り戻そうとして、手の中をすり抜けていったその存在が。
アルフォンスが。ほほ笑んでいる。

軽やかに蜂蜜色が瞬いた。
長いまつげが際立つ、大きな金の目が細められる。
そうして少しだけ首を傾ける。

「やっと、会えた。兄さん」

ああ、こんなにきれいな涙を見たことがない。
エドワードはなんにも言えずにただ頷いた。頷いて、強く強く、その大切な存在を力いっぱい抱きしめた
















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