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「アルフォンス。君は、アルフォンス・エルリックだろう。元に戻ったとは聞いていたが。」
してやったり、という顔でベンチに腰かけた少年を見下ろす。
そこは朝の公園で、もう来させないとあの兄が宣言していたにも関わらず、その少年はまた公園に現れた。
昨日とおなじ姿勢で、パン屑まで同じ。ただ、今日はさわやかな青いシャツをはおっている。
子供っぽい、うれしそうな笑顔が浮かぶ。眼をくるくるとさせ「すごい」とつぶやく。
大きな目をしている。
「どうしてわかったんですか。大佐。」
弾んだ声音に内心ほっとした。あの兄が「こさせない」と言ったからには、監視してでも弟を外には出さないはずだ。
だからこの少年がいるのを見た時は、違うのではないかと一瞬疑ったのだが。
そうだとわかってからはもうアルフォンス・エルリックとしか思えなくなった。
やはりその雰囲気は鎧の時と変わらずに、随分とふんわりしている。
「昨日はずっともやもやしていた。だけど鋼のを見たときにすぐわかったよ。ああ。あの鉄砲玉に欠かせない存在か、
ってね」
「もう少し、面白がりたかったんだけどな」
「おいおい」
ははは、と二人で笑った。
彼はこんな風に笑うのかと笑うことをやめ、改めて幼い笑顔を見る。不思議なもので、鎧の表情の無かった時からこ
んな風に微笑んでいたように思えた。
「君の兄さんに、君に会ったと伝えたら盛大に嫌がられた。今日は一体どうやって出てきたんだ。」
「道理で・・・」
アルフォンスはちょっと唇をとがらせて、マスタングから視線を外した。
「朝から大喧嘩です。明日からは鳥に餌を上げられないかもしれませんよ。」
今日だけ、今日が最後って、しぶしぶ許してもらいました。
少年は餌をひと振り、パン屑は、さわやかな朝の空気の中に各々弧を描いて散らばっていく。
「兄さん、大佐にずいぶん失礼なこと言ったんじゃないですか・・・すみません。」
ぺこりと頭を下げたので、逆にマスタングが恐縮した。
「いや、それは君に悪いことをした。あれの口の悪さには大概慣れたつもりだよ。」
鳩に向けられた視線が角度を変えてクルリとした目が見上げてくる。まあるい金がゆったりと細められた。
そう、こんな表情がアルフォンスから年齢を奪わせるのだ。あるいは加えてしまうのか。
「よかった。慣れてもらえて」
しばらく笑顔を返すことを忘れて、見いる。この笑顔は何だろう。鎧のころはもっと、子供っぽくなかったか。
すべてを許すような、包容してしまうような。
「君の体は、もう元にもどったんだろう?」
そう聞こうとして、やめた。アルフォンスの顔は、もう少年らしい表情に戻っている。
「・・そうだな。あの悪態つきには、な」
けほん、と小さく咳をする。
「なかなか慣れるのには苦労した」
そうしてまた二人で笑った。笑いながら、明日はもう、自分もこの公園に来ないであろうことを思った。
ハトが寄ってくる。そのハトに、手を伸ばしたアルフォンスの首筋がさらされて、寒そうだな、と思った。
自分が巻いていたマフラーを外して、ごく自然に華奢な首にかける。アルフォンスは驚いたように顔を上げて、マスタ
ングを見てマフラーに手をかけた後、柔らかくふっと笑った。
「ありがとうございます」
首に改めて巻きつけている。
「また、来たらいい」
「え」
「たまにはあの兄から解放されることも必要だろう。たまにはここに遊びに来給え」
思っていることのうらはらが、口から零れて戸惑った。目の前の少年はきょとんとした顔でこちらを見ている。
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