|
食事の後、結局熱を出して倒れこんだアルフォンスを、抱えるように寝室まで運んだ。ベッドの上に寝かせてやって、
布団をかけたまではよかったのだが、アルフォンスが額にひどく汗をかいていることに気づく。
「アル。着替えるか?」
返事は無い。
ただ小さく呻いて寝返りを打った弟の、赤く染まったうなじにエドワードは眉をしかめた。
視線をはがすように体をひるがえして、頭を冷やすためのタオルを取りに行く。寝まきも、おそらく必要だろう。
洗剤の香りのする寝間着を抱えてアルフォンスの横になっている部屋に入る。
熱いのか、布団は半分めくれてアルフォンスは苦しいそうに呻いていた。
さっきまであんなに会話していたのに。
エドワードが眉を寄せる。額に手を当てるとひどい熱で、さらに汗びっしょりだ。
用意したタオルで額と、顔全体を拭ってやる。この調子では、きっと体はもっと汗ばんでいるだろう。
シャツに手をかけて、さすがに少し躊躇する。意を決してボタンを外した。
シャツがはだけると、アルフォンスは小さく息を吐いて無意識に顔をしかめた。
「ちょっと、がまんしろよ・・・」
腕を持ち上げて、袖を抜きにかかる。
聞こえてないとは分かっていても言葉をかけた。
「・・・ん・・・」
意外と意識はしっかりしているのか、アルフォンスは熱に浮かされながら、返事を返してきた。ひそめられた眉。エド
ワードは思わずその、真っ赤に熱をもつ頬に触れた。
生身の、左腕で
「寒・・・」
げほっ、と
アルフォンスがせきをして、体をよじった。ふさがれていない手で、必死でシーツを手繰り寄せようとしている。体の苦
痛に、理性が追い付いてないらしく兄の行動の不可解さにも意識が回っていないようだ。
「ごめんな」
首筋に唇を這わせると、異常ともいえる高い体温に、やはり罪悪感が湧き上がる。
なのに
同時に視界がぐらりとかしぐような錯覚に襲われる。
息が上がる。
追い詰められる。
弟の、熱に浮かされてもがく脚を掴んで間に体を滑り込ませた。
赤い顔と、波打つ胸と、もがくからだと。
寄せられた眉と、荒い息遣いと。
好きな人が、世界で一番大切な人が、自分の体の下ででこんな姿でさらされているのに、平気な男がいるのだろう
か。
熱い、と思った。
その勢いのまま、唇に口づけた。ずっと求めていた感触が、思っていた通りの柔らかな温かい感触がそこにはある、
とどめられそうにもない。
唇に深く、入り込む。
アルフォンスは呼吸を求めて兄を跳ね返そうと腕を突っぱねている。その腕を取って、またベッドに押し付けた。
「はっ、・・・・はあっ。」
「アル」
好きだ。
想いと一緒に、情欲があふれ出して頭がおかしくなりそうだった。
雨の音がひどくなる。
音にまぎれて吐き出してしまえば、きっとすべては上手くかき消される。
「・・・アルフォンス、好きだ」
「―――――い、やだ!!!」
かっ、と閃光のようなひかりが部屋中に瞬いて、そのあと耳をつんざくほどの轟音が響いた。
ごろごろごろ、と遠ざかる音、エドワードは遠ざかって静寂を取り戻した部屋の中に、荒くなった自分の呼吸する音を
鼓膜にうるさいほど聞いた。
アルフォンスが、苦しいよ、と小さく呻いている。せきを繰り返している。
少しだけ理性が戻ってくる。
戻ってきて見えたものは、あらわになった胸が激しく上下する弟と、その弟を組敷いている自分自身で、両手はいつ
の間にかあざが残るほど強く、握りしめて拘束してしまっている。
思わず額に手を当て呼吸を正しながら汗をぬぐった。
なにを、しようとしていた?
考えるだに恐ろしい。
「あ、アル!!」
呼吸音の短いアルフォンスに慌てた。必死になって、タオルを手繰り寄せて体を拭く。とりあえず上着だけでも着替え
させようと新しい寝間着にむりやり袖を通させた。
慌ただしく着替えさせたら、エドワードも息が切れた。素早く布団をかぶせてやって、ベッド脇にへたり込む。
頭がくらくらする。
「だあっ、くそ!」
散らすようにがしがし掻いた。
今はすやすやと眠るおとうとの罪のない顔を夜通し見つめていた。
*****************
センスレスの続きとねたかぶりじゃーーん。という突っ込みは、この際飲み込んでいただいて。
はい、ごくん!(うをい!)
|