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「踊ろうぜ、アル。」
差し出された手を凝視して、アルフォンスはもう一度、ネクタイのゆがみを直した。兄が朝つけてくれたそれは、自分
でつけた方が確実にきれいだろうと容易に想像がつくほど、いびつな形をしている。
「えーと。ごめん兄さん、聞こえなかった。」
だから、踊ろうって
何を
ワルツ。・・・スローワルツでいい
ほれ、と兄が手を差し出してくる。
「兄さん、わるつ、って知ってる?普通兄弟で踊るものじゃないんだよ、兄妹ならまだしも」
「今お前が言ったろ、踊りたいやつと踊ってこいって。おれ、踊るやついねえもん」
そう無邪気に笑った兄は、顔立ちは整って「格好いい」の部類に入るのだ。さっきからちらちらと投げかけられている
視線や、踊ってほしそうな女性の態度が目に痛い。だから兄を解放して、自分もこのダンスパーティーを楽しもうと思 ったのに。
「お・・・男同士で踊るなんて。」
「文句言うな。いいだろ一回ぐらい。」
そういうと、エドワードはアルフォンスの手をがっしりと掴んで体ごと引き揚げた。もう一方の手をアルフォンスの腰に
勢いよく回したから、焦ったのはアルフォンスだ。
「ま、待って待って!どっちが女性役をするのさ」
「お前。」
さも当然のことのように言い放つ。アルフォンスはあきれてものも言えずに口をパクパクさせた。
さらには「お前の方が器用だろ?」などと首をひねったから、もう反論もできない。
まあ、さすがに女性役の兄というのは奇妙な気がする。
「わかった・・・一回だけだよ。」
エドワードは、本当にうれしそうににっと笑った。なんだか拒否し続けたアルフォンスが申し訳なくなってしまって、溜
息をつきながら兄の手を取る。
「あーと、ステップ逆だから、右、右、・・・わ!」
平衡を失ってバランスを崩すと、エドワードが力強く腰を引いて支えた。掌を握っていた手も背中に回って、そのまま
抱きこまれる。
「ありがと・・・」
態勢を立て直そうとするのに、エドワードはアルフォンスの腰を強く抱きしめたまま放さない。
・・・兄弟で何やってんだろ。
ついにばかばかしくなって、文句の一つでもいってやろうと兄を見上げた。
「・・・兄さん?」
エドワードの耳が赤く染まっている。そっぽを向いて、でも腕の力は緩まない。
・・・人恋しいのかな。
そう結論をくだす。長い間あんな旅をしていた兄のことだから、恋の仕方なんて忘れてしまったのかもしれない。
そう考えると、エドワードがあわれでしかたなくなって、結局、アルフォンスは抱きしめられたままになっていた。
・・・えー。アルタンの腰を力強く引いて、そのまま抱きしめる兄さんが書きたかったんです。
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