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「兄さん!恋人ができたって本当!!?」
弟のくるくるした目が覗き込むように見つめてきて、エドワードは言葉を失った。
何、何だって、恋人?
「ハボックさんが、昨日兄さんが女の人と歩いてるのは見たって!何で言ってくれないんだよ。」
「でもウィンリイじゃなかったのは意外だけど・・・」とかなんとか呟いている。
読みかけていた新聞を机の上において、弟が用意してくれた朝食に向き直った。白い湯気と向かいの席に着いてに
こにこする弟がなんだか食欲をそそる。
「よかったー兄さんに恋人ができて。本当によかった。」
きらきらと音を立てそうなほどにアルフォンスの笑顔がまぶしい。この弟はなんにも知らないのだ、と思うとたまらなく
憎らしくなる。
結局はお前の代わりに違いないのに。
金色の短髪、金目のマリアは、一目会ったときから何となくアルフォンスを彷彿とさせた。自然と目で追ってしまうよう
になってから、この女を好きになれば忘れることができるだろうかなどと考えてみた。
声を掛けて、ひどく性格がさばさばしているも知った。
こいつならわりきれるかもな、体だけの関係でも。と思った。
だってどんなに欲しくても抱けないだろ。実の弟を、その兄貴が抱いたりできないだろ。
お前は全然俺を想ってないのにさ。
肉体を取り戻した弟は、以前よりもずっと輝いていて、活発で、ただエドワードをその純粋さで翻弄して、そして癒し
た。毎日むくむくと元気になっていく姿を追っていくうち、自分の中の気持ちが抑えきれないほど大きくなっているのも 感じた。
愛している
などということは、鎧のころからそれこそ痛いほどに感じていたのに、それ以上に強い想いなんてありえないと強く信
じていたというのに。
どうしようもない。自分の中の凶暴な気持ちが目覚めて、今度はその想いに翻弄された。
だから恋人を作った。幸いなことに、恋人のマリアは強い独占も、また干渉もしてこない。
ただ、弟の、一番大切な弟の、嬉しそうな顔だけがつらかった。
毎日。毎日。夢を見るのだ。
あの日にもしも戻れるのならと、繰り返し願うのだ。
そうして絶望とともに目が覚める、頭を抱える。
時に呻く、吠える、何かを探し求めるように彷徨う。
機械鎧の腕を投げつける。
隣にも、家の中にさえも、アルフォンスはいない。
アルフォンスはいない
あの叫び声が、繰り返し聞こえた気がする。
「にいさん、にいさん、にいさん」
「いって・・・」
頭が痛い。昨日はハボック少尉に誘われてずいぶん飲んだな、と顔をしかめながら目を開けた。
見慣れた天井が目に飛び込んでくる
「あー・・・」
またアルフォンスが酔っ払った自分を運んでくれたのだろう、最近ずいぶん体調も整ってきた弟は「そろそろ組手がで
きそうだ!」と息巻いていた。兄としては気が気じゃない。
「いてて・・・、なんだ。腹もいてえ。」
自分が裸であることにも気づいた。腹部に、赤黒くあざがある。だれかと喧嘩でもしたのだろうか。全く覚えていない、
と首をひねった。
「あえ。」
顔に添えた手をまじまじと見る。
銀色に光る機械鎧の拳に、血が付いていた。
「うえ、なんだこれ。」
そうしてきづいてしまったのだ。
隣に気配を感じて、自分の隣を見る。
まず視界に入ってきたのは白いしっかりした足で、その足には血が大量についていて
「おい・・・」
エドワードは何度か瞬きしながら隣に横たわる存在を見つめた。
ベッドは、その人を縛り付けるようにいたるところが錬成されている。
「アル・・・?」
見間違えようのないその顔は、エドワードが確かめてしまうくらい右半分が二倍ほどに肥大してしまっている。自分の
機械鎧の拳についた血を恐る恐る見て、エドワードは震えだした。
「・・・・・・・・・・ウソだ。」
アルフォンスの口いっぱいに、エドワードの脱いだはずのシャツが含まされていた。
必死で、震える手でそのシャツをアルフォンスの口から取り出した。アルフォンスを縛り付けているベッドを引きちぎる
ようにはずす。
「ア・・・アル・・・」
傷だらけで転がるアルフォンスは、身動き一つしない。ぴくりとも動かない
何が起こっているのかよくわからない。頼むからこれは夢であってほしいといまさら願った。
頭を何度か振る。瞬きも繰り返した。目の前の光景が変わらないことも、ゆめでもないことを知ると、どうしようもない
絶望が下りてきた。
ただ、どうしていいか分からずにアルフォンスが横たわるベッドの隣にひざをついていた。触れることもできない。視界
がぶれるような錯覚に襲われて掌で目を覆ったとき、アルフォンスの顔が身じろぎして、薄く眼を開けた。
「アルフォンス!」
真っ青になって叫ぶ兄を視界の中に確認したとき、アルフォンスは上半身をゆっくりと起こし、これ以上ないほどベッド
の上に吐いた。
「アル!!!」
最後には血まで吐き出したアルフォンスを目の当たりにして、エドワードは息が詰まった。階段を転げるように落ちて
受話器を取る。病院に電話した。目の前が真っ暗になる。自分が何を言っているか分からない。
ただ、「弟を助けてくれ、頼む、頼む。」と繰り返し聞こえた気がする。
「レイプの痕跡が・・・」
そう、言いにくそうに告げたのは病院の医師だった。エドワードは椅子に腰かけて、うなだれたまま返事もしない。た
だ、(おそらくアルフォンスの)血がべったりとついた銀色の手を見つめて震えだした。
「他に肋骨を二本、おられています、内臓が骨によって傷ついてしまっている。吐血はそのせいです。かなり固いもの
で殴られたか・・・。私もなかなか、こんなにひどい患者を見ません。本人もかなり抵抗したみたいですね、だからよけ い被害が拡大したんでしょう。」
自分の感情をこめ過ぎたと思ったらしい。医師は自分を制するように、こほんとひとつ咳をした。
まさか目の前にいる被害者の兄が、酔っ払って欲望のまま弟を犯したなどとは思ってもみない。
「軍に、通報しますか。」
エドワードは何も言わなかった。
ただ廃人のように椅子の上に鎮座していた。
まいにち、ゆめをみる。l
あいするひとが、ふりかえって、わらいかけている。
こちらがわらいかけようとすると、つんざくようなこえが、きこえる。
だいすきな、やさしいこえが、なんども、なんども、いやだいやだと、さけんでいる。
そうして、いちばんざんこくな、ことばを、はきつけるのだ
「ぼくはにいさんのこいびとじゃない、まちがうなよ」と。
たまらなくかなしくなる、うでをふりあげる。
「やめろ」というじぶんのさけびごえで、めをさます。
「やめてくれ・・・」
うごけない。
・・・・めもあけられない。
エドワードさん、ただいま「レイバーさん(スパイラル)」状態です。
レイバーさんはこうして生まれたのだよHAHAHA(笑ってごまかす)
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