書いてた管理人もよくわからない・・・
鎧の中でうずくまっていたアルタンを思い出してください。
だってかわいかったんだもん

*あるタンは少年です★




ここに








熱い。
白い手袋をつけた手で、弟が整えてくれた襟をくつろげる。
幸いながら、いつもはそういうことに小うるさい弟は今、隣にいない。
手でパタパタと顔に風を送りながら周囲を見回した。
見つけたいものは視界の中にないのに、忌々しい上司が目に飛び込んできた。きっちりと軍服を着こなす姿に思わず
舌打ちする。
今日は軍部の100周年記念パーティとかで、盛大に着飾った同僚や上司のにこにこした顔が、疲れた頭に疎ましい。
「せっかくなのだし、弟君をお披露目したまえ」とのたまった上司のせいで、兄弟でこの軍部の盛大なパーテイに招待
された。

話があったときには
「アルはまだ人前に出すような状況じゃねえよ。何かあったらどうすんだ。」
と完全却下だったのに、家に帰ってみると、周到な上司が直接弟に招待の電話をかけていたらしい。

「いろいろお世話になったんだし、無下にできないだろ。」
とアルフォンスはエドワードから、脱いだ軍服を受け取り鼻歌まで歌いながらハンガーに掛けていた。
タキシードを新調しなくちゃね、とかのんきなことまで呟く始末だ。

なのに、いない。

そう、いないのだ。アルフォンスエルリックが。エドワードの最愛の弟が。
パーテイが始まってすぐ、弟はステージに呼び出された。兄がひやひやしている前で、きちんと挨拶をした。
それは特に心を打つようなものでは無く、どちらかと言えばごく平凡な挨拶だったのだが、エドワードにはこの上なく
特別だった。つい目頭が熱くなってしまうほどの。
それが終わってエドワードが安心したころ、今度は逆にエドワードが顔見知りに捕まって、長々とした話の末、隣に戻
ってくるはずの弟を見失ってしまったのだ。


「ったく・・・どこ行った。」
まさかさらわれて、とか(このサイトなら、ある)
どこかに倒れて、とか(管理人なら、やる)
浮気とか(あーそれはないな)

「よー大将。どうだ、楽しんでるか?」
「あ、ハボック少尉。」
煙草を咥えた見慣れた姿を見つける。嬉しそうにきょろきょろしながら近寄ってくる変わらない姿に苦笑した。
「どうだ、かわいい子でも居たか」
「・・・ハボック少尉。オレは別にそんなの探してねえよ、あんたとは違うんだし」
「大将・・相変わらずだな」
あれ、片割れはどうした?さっき立派に挨拶してたろ。
「いないから探してるんだけど・・・」
「俺もみてないな。どこかで誰かと話してるんじゃないか?アルも積もる話があるだろ、久しぶりにみんなに会うんだ
し。」
「あいつまだ体調が万全じゃないから、心配なんだよ」
「相変わらず過保護だなー」」
煙草の煙をくゆさせる。息を吐いてエドワードを見ると、ごく当然だ、という顔で目線が弟の姿を探し回っていた。
ハボックが苦笑する。
「大将。女に興味持つのもたまにはいいっすよ」
「・・・んー」
空返事。本当にひどいブラコンだと思う。ここは一つ、刺激を与えてみなければ。

「こんな機会だし。かわいい子を探してみては?」
「やだよ」
などという会話をしながら、歩を進める。弟は向こうのホールに行っているのかもしれない、と。

「ほら大将。あのこ、あの金髪の子!きれいだぞ。」
「あ?」ハボック少尉が指さす方向に視線を向けた。探してみたが、特に「きれいな子」など視界に入ってこない。

きょろきょろしていると、不意にちょっとした違和感に襲われた。
視界に入った豪奢ならせん階段の下に、カーテンがかかっている。いつもはきっちりと閉じられているはずのカーテン
が少しあいていた。
普段収納場所として使われている。今日というハレの日に、荒っぽくめくれているそこが、何なく気になってのぞきこ
んだ。


「あれ。あんた、大丈夫か?」
らせん階段の下、カーテンの奥深くの暗闇に、小柄な少女が一人うずくまっているのが見えた。暗闇ではっきりしな
いが、あまり見覚えのない茶色い髪。
エドワードの声がかかって、びくりと寒色系のドレスを着た肩が揺れた。よく見えない。
エドワードはカーテンを持ち上げて、光を取り込んでよく見ようとする。
淡い、水色のドレス。
狭い肩幅。
大体10歳くらいか、と考えてある人物を連想した。
なんとなく面影が重なってしまう。そうすると、たとえ知らない少女でも放ってはおけない気がした。
「おい。気分が悪いなら医務室行くか?」
そう声をかけると、案外元気な様子で手だけがあげられ、ひらひらと動く。体を小さくして、顔を深く伏せた。

構わないでくれ、ということらしい。

こちらに向けられた掌をエドワードは目を凝らして、じっと見つめる。
「・・・」
立ち去らないエドワードに、逆にうずくまった少女が身じろぎして、らせん階段の奥の暗闇にもっと身を隠そうと、顔を
腕の中に隠したまま後退する。

「おい、大将?どうした?」
「あ、ハボック少尉。やっぱいいや、俺。・・・・見つけたから。先にいっててくんね?」
「おわ、このやろー。うまくやれよ。」といいながら、去っていく青い背中を数秒見送って、すぐに視線をカーテンの奥に
戻した。
ふ、と息を吐きながら、うずくまる少女を見返る。

暗闇の狭い空間に無理やり入り込んで、後ろ手でカーテンを閉めた。ひろひろと動いていた手が硬直する。そのてを
掴むと「や」という、短い聞きなれた声がした。

「アル。心配したんだぞ。」
意識して少し鋭い声をかける。少しすると観念したのか
「なんで分かったの・・・」
と、苦々しい顔をしたアルフォンスが顔をあげた。茶色い髪の毛が揺れる。
「俺がこの手をどんだけ握ってると思うんだ。」

アルフォンスの手をもう一度、ゆっくりと握りなおした。握りなれた体温に、エドワードが無意識に安堵の息を吐く。
「あーあ、兄さんにだけは見つかりたくなかったのに」
改めて弟を見ると、ずいぶんかわいらしい格好をしている。茶色の長いかつらと水色のドレス。持前の大きな瞳と長い
まつげ、全体的な線の細さのせいで、扮装したアルフォンスは、黙っていれば目の覚めるような美少女そのものだ。
思わず口をとがらせる。
「なんだこの恰好。今日はお披露目だから、正装してたんじゃなかったか?」
「してたよ、でもあいさつの後つかまったんだ。シェスカに。」
「犯人はシェスカか!」
エドワードの勢いに驚いたらしい、アルフォンスが咄嗟にエドワードの裾をつかむ。

「遊ばれたんだよ、今しかできないとか言って。女の人に冷たくできないし」
「今から女にもてあそばれてたらお前・・・この先大変だな」
「兄さんそれ表現間違ってると思うけど。」

狭い空間のせいで、アルフォンスの顔がまじかにある。長いまつげが瞬くのを、エドワードは目で追った。
「アル、帰るぞ。こんなとこでなにしてたんだ。」
「・・・ドレス・・・しめつけられて動けなくなってた」
「ばか!体に悪いだろ!緩めろ」
「背中に手が回らなくて」
というよりも早く、エドワードがアルフォンスの腰に手を回す。腰のあたりできつく結ばれたリボンを取って緩めてやる
と、アルフォンスが安心したように息をついた。
エドワードはそれを首筋に受けて、腰からはずしかけた手をもう一度回して、アルフォンスを抱きしめた。
「兄さん」
「もうこんな恰好すんなよ」
エドワードが目を閉じる。腕に力を込めた。
「ごめんね、心配掛けて。もうしないよ、似合わないし。」
アルフォンスのかすか笑った声が聞こえる。

そうじゃない、そうじゃなくて

「違う・・・」とだけこぼす。後の言葉はエドワードの胸の中に消えた。
腕に力を込める。




すごいかわいいよ、かわいいけど。

誰かに奪われたら。それだけは耐えられないだろ。














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