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「・・・いさん」
誰かが自分を呼んでいる。
体がうまく動かない、ここはどこだろうか。
胸の中を滑る絶望だけが、痛みだけが生きているようで、もう、目も開けたくない。
「おきて」
いやだ、ここにはなにもない、目を開けても、どこにも、なにも。
なにもない。
「・・・おきて」
うるせえ、もういいんだよ。
「兄さん、起きて。ボクはここにいる」
「う、あ・・っ!」
はっ、と口を開いて酸素を求めた。意識が覚醒する、
そうだ、いかなくては。
待っている・・・!
全身を、動く限り動かした。
手や体に物が当たって何か割れる音や倒れる音が盛大に響く。
おれはいかなくてはいけない。
そう、夢中で思った。
「マスタング・佐・・・!目を覚・・・した。錯乱・・・るようです。」
自分の隣で、人の声が聞こえた。聴覚はある程度わかったが、視覚はうまく機能していないようだ。何も見えない。
手当たり次第に腕を振り回し、立ち上がるために体を支えられるものを探した。
「だから言っただ・・・、あれしき・・鎮静剤の量では・・・と。」
「・・・か?いや、・・はここには絶対・・・連れてくるな。ア・・にも鎮・・剤を・・」
音もノイズ交じりだ。自分の体がわからない。と思ったとたんに、力強い腕が左肩に押し当てられてベッドに仰向けに
押し付けられた。同時に左手に何かが刺さる鋭い痛みが走る。
何かを投与されたこと、それが鎮静剤であるらしいことを理解し始めたとき、視覚がやっと追い付いてきたらしく、自分
をとりまく者たちの、荒い輪郭線を目が捉えだした。
かわりに、抑えきれない頭痛に顔をしかめる。
ベッド際の黒い輪郭が言葉を発した。
「起きたか、エドワード・エルリック。寝ざめの気分はどうだ。」
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