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体中がきしむ感覚で目が覚めた。
よくわからない夢を見ていた気がする。意味の無い、抽象的な、水の中で体が浮き沈みするような感じの。
でも、ここはいったいどこだろうか。いつもの病室ではない。
だんだんと意識が覚醒してくる。いつもの病室ではない空間、笑んだ医師の顔、夜の闇。
意識がなくなる前の記憶が戻ってきた。
ぼんやりと自分が誘拐されたことを思い出す。
そうだ、ここはどこなんだ。
起き上がろうとして、やめた。頭痛がひどく寒気がする。最後にかがされた、あの薬はいったいなんだったのだろう。
体がひどく熱い。
そこは列車の中だった。時間帯はもう昼らしく、窓からは明るいだろうと思われる日差しが差し込んでいる。直接光が
差し込まないように、さえぎられてはいるけれど。
自分の体を見た。シーツのような大きな布がかかっている。
いったい、気を失っていたはずの自分をどうやって列車に乗せたんだろう。ぼんやりする頭で考えたけれど頭が回ら
ない。
第一肝心の自分を連れ去ったはずのレイバーがいない。これは逃げ出すチャンスだろうか、とも考えたとき、男は帰っ
てきた。
「起きた?気分はどう。」
上機嫌な顔で、にこやかに帰ってきた。その笑顔にに意図がつかめない。
「先生・・・」
その後の言葉をつむげなくて口を閉ざした。レイバーが悲しい顔で微笑んで、
「体調はあまり良くなさそうだね。今は苦しいと思うけど、必ず体を休めるところを探すから我慢してくれ。」
そう言ってアルフォンスの体を抱きしめた。反射的に抵抗しようにも非力すぎてどうにもならない、ただ混乱した表情
で昨日まで医者だった男の顔を見上げた。
「・・・どこに・・・何を・・・先生は・・・」
自分のかすれた声で、喉がからからに乾いていることを知って驚いた。体が熱い。乾いた吐き気がする。
わからない。この男が何をしようとしているのか、なぜこんなことをしたのか、これからどこに行くのか。
レイバーはそっと金色の頭をなでて、額に唇を落とした。
「どこに行こうか。」
そうして、アルフォンスの体を抱きなおした。
そのしぐさに思わず兄を思い起こす。
「町のはずれに私の家がある。そこに行こう。しばらくは逃げ続けなくてはならないな、君の兄さんから。」
そうだ、今兄は何をしているだろう、
自分がすべてと言った兄は、空っぽの病室をみて何を思っただろうか。
そうしてまた、考えをめぐらす
これは、あらかじめ計画されていたんだ。いったい、いつから?なぜ。
「ボクを・・・返してください。」
兄のもとに。僕を作ってくれたあの人のもとに。
うなされるように訴えたけれど、帰ってきたのはため息だけだった。
できる限りの力で腕を突っ張った。男の体は思っていたよりもたくましく、びくともしない。さらに強く抱きしめられて混
乱した。それでも混乱する頭で考えた。
なんでだ、考えろ。先生は夜、何度か僕の病室にきて、何かつぶやいていた・・あれは、
「エヴァ・・・」
アルフォンスがそう呟くと、レイバーはびくりと体を揺らした。
「エヴァって、誰ですか・・・?」
「もう少し眠ったほうがいい。」
「先生は、以前病室にきてエヴァ、と呟きましたよね。」
叫ぶように一気に言って、は、と息を吐いた。胸が圧迫されて苦しい。
息を吐いて、吸おうとした瞬間にレイバーの手で口を覆われた。何かの錠剤が入ってくる。思わず飲み込んで吐き出
そうとむせた。動揺と吐き気にめまいがする。
レイバーの顔を見上げた。黒い瞳にさす、黒い影。
ああ、この表情・・・見たことがある。
薄れていく意識の中で懸命に思い出す。
「エヴァは・・・、先生の・・・」
両目を覆うように、男の厚い手が覆ってくる。視界を閉ざされたとき、鮮明にそのときの光景が浮かんだ。
『先生は、兄弟とかはいないんですか?』
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